地球と月と太陽と |
年越しを自宅で迎え、明けててすぐ近所に初詣へ行った元旦、夕刻には雪のパラつく広島空港に到着していた。
目的地のその場所は、川のすぐ隣であり、その川岸をホンの50メートルも歩くと穏やかな海に出るような所だ。
ただ、堤防などがないその川岸を自力で進めるのは、大潮かつ干潮の時以外にはない。
今までの数回の滞在では地球と月と太陽のタイミングに自分が合わせられず、橋の真ん中から覗けるすぐそこの海にはまだ一度もたどり着いていなかった。
橋の後ろを振り向けば川と山、都会の人々が思い描く田舎の風景――恐らくそのほとんどのイメージがここに存在している。
瀬戸内海の魚は小さい。
この地の一部で「ドーマル」呼ばれているトラギスの天ぷらは最高だ。
そして、一口サイズにも満たない小鰯の刺身、口の中で骨が突き刺さるメバルのから揚げ、楕円でなく平べったいカキフライなども絶品。
普段ブリやマグロや鮭など大型の魚に慣れている自分にとって、なかなか馴染みの薄い小魚が食卓に並ぶその光景は新鮮であり、新たな発見でもある。
2013年初日の出から一日遅れたその翌朝にソレは訪れた。
眠い目をこすり、寒さに耐えながら幾分か薄暗い川岸を少し歩くと、潮が引き現れたその干潟はちょうど南に向かって270°の視界でそこに広がっていた。
寒く、少し曇が掛かってはいたが、その素晴らしい光景は贅沢なプライベート・サンライズ。
日の出と干潮――地球と月と太陽は絶妙なタイミングで自分を迎い入れ、ここでしか味わえないプレゼントしてくれたようだ。
翌朝、再会をしに行ったが、さらに晴れ渡り、輝きを増した姿を披露してくれた。